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拡張するBLの世界

 

Yaoiにスラッシュ、これ等は全てBLの男性同士の関係性や、BLというジャンルを表す単語だ。BLとは「Boys Love」の頭文字をとった略称であり、Boys Loveが示す通り男性同士の恋愛、性関係を主に題材にしたジャンル全般の名称になっている。そしてここ数年BLというジャンルは、段々とそのジャンルの輪を広げてきている。


近年、地上波ドラマや映画化を果たすBL作品が増えてきている。「きのう何食べた?」(よしながふみ/講談社)や「絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男」(紺吉/祥伝社)、その他にも「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(豊田悠/スクウェア・エニックス)通称「チェリまほ」はドラマ化を果たし。「チェリまほ」と「きのう何食べた?」は映画も公開された。漫画原作ではないが、数年前に男性同士の恋愛模様を描いたドラマとして「おっさんずラブ」が話題に上っていたことも記憶に新しいだろう。

この様に今BL作品が実写化し、地上波で放映することが増えている。その他にも海外発のBL作品が流行したりと、BLというジャンルを目にすることが増えてきているのではないだろうか。だがそもそも、BLというのはどういったものなのか?

BLというのはジャンルの名称なので、勿論展開される媒体は様々なものが存在する。ここではその中で、歴史も踏まえBL漫画について述べていく。

 BLの歴史はそもそも、70年代頃に既存の少女漫画にはない新しい要素を含んだ、少年で描くことで、読者の少女達に身近すぎることのない少女漫画が一気に花開いたことが始まりと言われている。竹宮惠子や萩尾望都、山岸涼子等新鋭気鋭の作家たちが描いた「風と木の詩」「ポーの一族」「日出処の天子」などの耽美系と言われる「少年愛」描写。そして78年創刊のBL総合雑誌の先駆け「JUNE」創刊や、その後の少年漫画の二次創作(キャプテン翼等)から「やおい」(やまなし、オチなし、いみなしの略)が人気を更に産み、日本での現在のBL文化は形作られていった。

このように二次創作、そしてJUNEや耽美系の影響もあり前述されているようにBL漫画というのは二次創作、ファンメイドの創作が多いことでもよく知られている。

商業誌で発表される一次作品である「商業BL」と、主に何らかの、BL要素の有無を問わない作品の二次創作等で作られる(勿論他の同人作品同様、オリジナルも存在するが)ファンメイドの「同人BL」。この「同人BL」と「商業BL」、勿論両方とも読むという層も存在するが、読者層が被っていないこともままあるのだ。商業、同人どちらか片方だけ読む人も居れば、両方読む人もいる。同じように男性同士の恋愛を題材としたBLを愛好しているファン同士でも、前提条件が違うことも多い。

また特に同人BLの特徴として、受け、攻め(挿入する側とされる側)とリバ(受け攻めの固定がなく、受けも攻めも可能なポジション)と呼ばれるセックスポジションが重要視されることも特筆すべきポイントだろう。商業作品でも「この受けが〜」といったように使われていたりと、キャラクターを表す大事なポイントになることは多い(受け攻め、というのが既存のジェンダー観に基づきキャラクター性にまで拡張されうることもあるため、全肯定はできないが)。

だがこと同人作品においては、BL要素のない既存の作品の二次創作であることもあるため。そのセックスポジションの設定が重要なポイント、になっており、逆カプ(自分が考えている受け攻めとは反対の受け攻めのキャラクターのカップリング)の作品はみない。というオタクも多く、論争になることもままある。

ではBLのどこが魅力なのか?と問われたとき、個人的に明確な答えは持てていない。キャラクター間の関係性のバランスがハマりやすい。また恋愛も、それ以外の曖昧な関係性を楽しめる。そしてその二人のifを考えたりもできたり……。といったことはあるのかもしれないが、個人的にここに一番魅力を感じているのか?と問われたら微妙なところだとも思う。

では私自身がBLを読み始めた時に何に感激したかといえば、ジャンルとしての許容の広さだろう。BLというのは、LOVEとつくのだから恋愛関係のみが主軸のジャンルと想像することは多いのではないだろうか。勿論そのような作品は多く、またその中に面白い作品も多数ある。だが同人は想像できるかもしれないが、商業BLにおいても暴力的、裏社会ものであったり、他にもSF、ファンタジーと。BL、男性同士の関係性を描きながらも、様々なジャンルとミックスされた作品が多数ある。そしてそれはBLの独特の読み味、魅力の一端につながっているのではないだろうか。

例えば「寄越す犬、めくる夜」(のばらあいこ/祥伝社)や「コオリオニ」(梶本レイカ/ふゅーじょんぷろだくと)のように、裏社会ものであったり。近年目にすることが増えたゾンビ物の「スリーピングデッド」(朝田ねむい/プランタン出版)。

その他にも「MADK」(硯遼/Canaコミック)という作品は、カニバリズム的な欲求を持つ少年が、それを解消するために悪魔を呼び命と引き換えに悪魔の臓物を食べるというカニバリズムと内臓姦から始まるBLだ。タイトルは「モツ・アクマ・男子高校生」という内容そのままの略になっている。カニバリズムから始まる。というのは倫理観的にどうなんだ?という面も少なからずあるだろうが、独特の世界観に硯遼の描く悪魔達の美しさ、人ではないもののグロテスクでもあるがどこか破滅的な美しさを感じる行為が描かれる。

他にも冒頭で書いたように実写化や、海外物のBLも数を増やしている。多数の作品がアニメ化を果たしている中華BLや、Youtubeにて無料で視聴ができた。という視聴ハードルの低さも相まって大流行した「2gether」をはじめとするタイのBLドラマ作品。Netflixでドラマ化もした「HEARTSTOPPER」等。それにwebトゥーンとして無料アプリで入ってくることの多い韓国のBL等。様々な国のBLコンテンツが輸入されてきている。

中でも個人的に紹介したいのが「夜画帳」(Byeonduck/フロンティアワークス)という作品だ。この作品は韓国朝鮮時代を舞台にした珍しい歴史物BLで、朝鮮時代に貴族である両班と、男性同士の春画を描く絵描きが題材のBLで、朝鮮時代の身分差や時代背景を活かした日本では登場しなえいだろう作品になっている。そしてwebトゥーンなのでフルカラーで縦読みというのも面白いポイントになるだろう。

このようにBLは様々なドラマ、映画化されたものから。海外のもの。今回は紹介しなかったが、ある日ふと同じクラスの子に恋におちる高校生の恋愛を描いた「同級生」(中村明日美子/茜新社)や、離島で出会った少年と紆余曲折ありながらも着実に、ゆっくりと二人の理解を深めていく様が描かれている「海辺のエトランゼ」(紀伊カンナ/祥伝社)等。暴力や血液が介在しないBLの漫画も多くある。もちろん小説やゲーム等ジャンル媒体が無数にあるBL。どれかひとつ手を出してみては、BLという世界に顔を浸してみてはいかがだろうか。

(文/丸橋)