「ゴクシンカ」優しさとは、強さとは。
「ゴクシンカ」(ピエール手塚 / KADOKAWA)を読んだ。
作者のピエール手塚氏といえば、「ゴクシンカ」と同じタイミングで「ひとでなしのエチカ」という短編集(こちらも面白かった、オススメ)を出し、その他にも「恋のニノウチ」という読み切り(教室に机が一つしかない、オススメ)も個人的には記憶に新しい。
「ゴクシンカ」は、顔が怖いだけでヤクザに誘われた気の弱い男が、気の弱さから生じた様々なトラブルを内面化(憑依?)してヤクザ世界をサバイブしていく異能ヤクザバトル漫画だ。
人によってはよく覚えがあるようなトラウマ。例えば注文を忘れられて、それを言えずに時間が過ぎていってしまう。等を大量に経験し、それ(自分の何が悪かったのか?)を反芻し続ける主人公。そんな彼に思わず自分を見る人も多いのではないだろうか。
だが彼はその際に自分を傷つけた相手の押しの強さというか、我の強さを取り込んでその瞬間だけ内面化する異能を使うことで、ヤクザの世界を戦っていく。(今、注文をしにくいな……)とドギマギして無駄な時間を過ごした経験のある私は、思わず応援したくなってしまう。
さて、本作は我の強さを内面化して戦っていく漫画ではあるが、主人公がそれを会得した経緯も、人に信頼され(結果、ヤクザに誘われてしまうが)たのも、優しさ故である。
我の強さ、というものが優位な時はある。そしてそれへの情景も感じながらも、人間の本来の優しさを決して否定することはなく、それがあったからこそと思わず肯定してくれるような作品ではないだろうか。
果たして主人公が巻き込まれる日本中の抗争とはなんなのか、大体のトラウマが作者のピエール手塚氏の経験とのことだが。ストックは持つのだろうか……。思わず引き込まれ、続きの気になる漫画になっている、おすすめだ。
(文 / 丸橋)