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沈み込む、ブライアン・イーノ展。

 


平成初期に建築された京都の玄関口でもある、現代的な駅ビルである京都駅ビル。そして明治期に建築された最大級の木造建築としても有名な京都を代表する仏閣である東本願寺。その間にあるような昭和期に建築された京都中央信用金庫厚生センターは、時代の狭間にあるような存在感を放っている。 

 厚生センターは一見固く、無機質なような四角く灰色な出立ちだが、アーチ状になった窓が配置されていることでそれだけではない印象を与えてくれる。その厚生センターの中で、ブライアン・イーノの京都での展覧会は開かれている。


 

 会場の中は薄暗く、赤い絨毯とほのかな灯りが道を示してくれている。会場全体にはお香の香りがして、歩いていると会場のあちこちからうっすらと音が漏れ出てくる。3階から、下に降っていくような構造になっている会場の中、殆どの作品は個室で区切りになった、閉ざされた鑑賞体験だ。部屋には防音材のようなウレタンでできた椅子があり、落ち着いて体験ができるようになっている。真っ暗な部屋の中でほのかな灯りに照らされながら鑑賞できる3階。そこから降るように、似ているようでいて都度都度変わっていく盆栽とループしているような感覚の廊下。反復しているようで反復でない様はこの会場で聞こえる音楽にも似たものを感じる。そしてどこからか聞こえる音がミックスされて聞こえてくる。

 私はこの会場で時間も、見方も、何を見るかも自由なようでいて、何もかも支配されているような、覚以外の五感を支配されたような感覚も同時に覚えた。見る場所を限られて絞られて、聴覚はもちろん嗅覚も、そして座ることで触覚も私が丸ごとブライアン・イーノの世界に入り込み、沈み込んでいくような気持ちになる。下へ下へと降っていく順路も、それに一役買っているだろう。

個人的に3階の冷房の温度だけは寒すぎるのでどうにかしてほしいが、そんな私でも深い没入感を覚えるブライアン・イーノの展覧会は、ブライアン・イーノをまるで知らなかったのに、思わず長時間居てしまうような空間になっていた。

(文/丸橋)

盆栽から伝わるもの

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非日常体験の先の日常