第三回公開研究会:Reconcile your Body and Soul (but how?)

趣旨

reconcileyourbodyandsoul一般的な音楽大学のカリキュラムには理論教育と実技教育という領域があり、時間割上ではこれらが仲良く展開されている。しかし現場の教育実践を見ると、両者のあいだに横たわる深淵あるいは対立も見え隠れする。理論教育では、主に政治経済的/文化的/歴史的コンテクストのなかで作品を位置づけるための、いわば他者志向の洞察力が求められるのに対し、実技教育ではそれよりもむしろ、自分志向の創造性や独創性を追求することが奨励される。

従来のクラシカル音楽を軸とした音楽大学のカリキュラムであれば、これは当然とされてきたのかもしれないが、ポピュラー音楽教育になると、この対立は大きな問題として意識されざるを得ない。一つには、ポピュラー音楽研究という領域が、そもそもコンテクストの研究(特に社会科学)のなかから生成してきたため(ポピュラー音楽研究の発端の一つは青年犯罪学と逸脱文化の研究である)、実技教育の歴史が浅いということがある。もう一つは、既存のレパートリーの研究が実技教育において重要な役割を果たすクラシカル音楽に対して、ポピュラー音楽では、作品そのものを新しく生み出すことが実技教育の前提となっているということである。

高等教育機関におけるポピュラー音楽教育のあり方を考えるとき、このことは、従来の音楽教育の前提を突き崩しかねない重要な問題提起につながるのではないだろうか。入学当初、発展可能性の高い、優秀な音楽史のレポートを提出した学生が、それを踏まえているとはおよそ思えないエゴセントリックな作品を制作して卒業する可能性も少なくないのである。もちろんそれは絶対的に否定すべきことだというわけではないし、実技担当の教員にとっては一方的な議論にも聞こえるだろう。しかし、ポピュラー音楽教育の潜在性を十分に引き出そうとするなら、その先を考える必要があるのは明らかである。

第三回目となる今回の公開研究会では、ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ音楽学部でポピュラー音楽コースのカリキュラムを編成するトム・パーチャードさんと、フェリス女学院大学音楽学部でポピュラー音楽領域を担当する川本聡胤さんをお迎えして、それぞれの立場からポピュラー音楽の理論教育と実技教育の調停可能性についてお話しいただく。内外の豊富な事例を通して、ポピュラー音楽教育ならではのカリキュラムの方向性について模索してみたい。

日時

11月8日(日)14時〜17時

場所

京都精華大学への交通アクセスはこちら(
友愛館は情報館(図書館)の隣の建物です(キャンパスマップ
当日は日曜日で、スクールバスの運行がありません。出町柳から叡山電鉄をご利用いただくか、地下鉄烏丸線国際会館前駅から、京都バス40番、42番、52番をご利用いただき、「京都精華大学前」までお越しください。(叡山電車時刻表)(京都バス国際会館前時刻表

登壇者

トム・パーチャード(Dr. Tom Perchard)

ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ音楽学部上級講師(senior lecturer)、同大学院研究ディレクター、ポピュラー音楽コース編成責任者。ゴールドスミス・カレッジでPh.D.取得。学術的関心の中心はジャズとポピュラー音楽の歴史と修史。2006年にリー・モーガン研究としては世界初となる『Lee Morgan: His Life, Music and Culture』(Equinox)を刊行し、高い評価を受ける。2014年にはAshgateから編著『From Soul to Hip Hop』を、ミシガン大学出版局から二冊目の単著『After Django: Making Jazz in Postwar France』を上梓。ポピュラー音楽コースでは歴史や様式、楽曲分析やコンテクスト研究などの授業を担当する。

川本聡胤

フェリス女学院大学音楽学部音楽芸術学科准教授。ノース・キャロライナ大学チャペル・ヒル校にてPh.D.取得。欧米のポピュラー音楽を分析的、理論的に研究。『IASPM@Journal』、『Music Theory Spectrum』、『リズム研究』、『ポピュラー音楽研究』などの学術誌編集に携わり、2013年には『J-POPをつくる!』(フェリス・ブックス、2013)を発表。『キーワード150音楽通論』(アルテス、2009)、『グローヴ・アメリカ音楽辞典』(オックスフォード大学出版局、2013)、『高校生の音楽2』(教育芸術社、2014)などの教育的・啓蒙的な書物の執筆にも協力している。音楽芸術学科では楽曲分析や音楽理論、ポピュラー音楽史などを教える。

安田昌弘

京都精華大学ポピュラーカルチャー学部音楽コース教授。東京都立大学(現首都大学東京)人文学部卒業後、渡英。英レスター大学マスコミ研究所(CMCR)でヒップホップ文化を軸にした日仏音楽産業の研究を行いPh.D.取得。現在は関西、特に京都の音楽シーンについてフィールドワークを行っている。訳書に『ポピュラー音楽理論入門』(水声社)、『ポピュラー音楽をつくる』(みすず書房)、共著に『The International Recording Industies』(Routledge)、『ポピュラー音楽から問う』(せりか書房)、『音楽が終わる時』(新曜社)など。音楽コースでは文化産業論、批評理論などの座学のほか、音楽イベントを企画・実践する実技科目も担当する。

主宰

本研究会は、京都精華大学全学研究センターの企画研究プロジェクト「ポップを教える・ポップで教える〜大学におけるポピュラー文化教育のあり方に関する実証研究」の一貫として実施されます。