理想の公園づくり/宝ヶ池公園の利用者へのインタビュー(執筆:槇本欽優)


●公園とソーシャルデザインの関係性

 宝ヶ池公園は総面積が約62.6haもあり、そのほとんどが雑木林や草原などの緑に囲まれている。また、名前の由来でもある宝ヶ池があり、北東には岩倉川・高野川が流れており、昔からの地形や自然を生かした設計がされている。老若男女を問わず毎日たくさんの人々に利用されており、私もその利用者の一人だ。緑と水と生き物に囲まれ、私にとって唯一都会の喧騒から離れられる場所であり、よく利用している。元々公園が好きだったということもあり、このソーシャルデザインという授業でどうしても公園をテーマにしたかったのだ。

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 公園は世界中の誰もが共有出来る場であり、公園ほど気軽に立ち寄れる施設は他にないと私は考えている。公園デザインについて調べていくうちに分かったことがある。それは、公園は実際に出来る場所の環境に合わせて作りを変えたり、来た人の気持ちや過ごし方、人の行動の流れまでもを意識して設計されているということだ。そこで1つの疑問が生じた。

「誰もが気軽に立ち寄れるからこそ、公園には意図的にコミュニケーションが生まれる工夫がされているのではないだろうか?」
そして、
「誰もが行きたいと思える公園がもし出来たら、さらにコミュニケーションが活発になるのではないか?」。

 私は実際に宝ヶ池公園へ出向き、利用者の方にインタビューをすることにした。

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●インタビュー決行日

 2月6日、土曜日。 この日は休日ということもあり、「北園』は野球やサッカーなどのスポーツ少年団の練習で賑わっていた。他にも、愛犬との散歩やサイクリング、橋を渡り「憩の森』へ行けば、バードウォッチングにたこあげといったところだろうか。様々な方法でのどかな休日を楽しむ人々の姿が見えた。そしてその人々はみんなプライベートで来ているということもあり、インタビューする気満々だった私はなかなか踏み込めないままさらに奥へと進んで行った。
 「宝ヶ池」のほとりをしばらく歩いていると、一際目を引く人物が私の前に現れた。

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以前、散歩を目的に宝ヶ池を一周していた時の事。ちょうど半分くらいだろうか。国際会館の向かい側まで来た時、真っ白の大きなアヒルを見かけたことがあった。その時は近づいたら逃げてしまうと思い、遠目からしばらくその艶やかな白を堪能し、その場を後にした。その時と全く同じ場所に、あの白いアヒルが居たのだ。目を取られて間もなく、そこへ一人の女性が現れた。「ガーちゃん、ガーちゃん」とアヒルに喋りかけながら、持っていたタッパーから野菜を取り出した。(飼育員さん?が餌やりをしているんだな)と、心の中で解釈し、勇気を出して「きれいな鳥ですね」と声を掛けた。すると女性は、とてもフレンドリーに話し始めた。ガーちゃんと呼ばれるアヒルのこと、宝ヶ池の歴史のこと、最近池で行われた映画撮影のことまで。たくさんの話を聞かせて下さった。女性は60代で、退職済みの方だった。今は、飼育員という訳ではないが、自主的に毎日宝ヶ池までガーちゃんのお世話をしに通っている常連とのこと。私は、この宝ヶ池公園でどんな風にコミュニケーションが生まれるのか尋ねてみた。

●動物たちを介してコミュニケーション

 コミュニケーションが得意でなくても、「人」と「人」との間に「動物」が入ることによって、コミュニケーションのキッカケができるそうだ。この女性は大の動物好きで、愛犬を連れて散歩している飼い主さんと、愛犬を介してよくお話をするのだそうだ。散歩している方もほとんどが常連らしく、お散歩コースも決まっているので、次また会った時も自然とコミュニケーションができるのだ。現に私もこのインタビューを行うにあたり、話し掛けるキッカケとなったのはアヒルのガーちゃんだったということから、その意味を体感した。
 こうしてこの宝ヶ池公園には、動物たちを介して行われるコミュニケーションが存在するのである。

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●過去と振り返って

 話によれば、この宝ヶ池には数十年前までカモやアヒルはもちろん、たくさんの動物たちが住んでいたそうだ。昔を知らない人の目からすれば、今でも充分動物に溢れていると思ってしまう。しかし、激減したという。当時を知っているお爺さんやお婆さんの話を聞くと、「今の宝ヶ池は死んだように寂しい」と言うそうだ。毎年国際会館で打ち上げられる花火の破片などで池が汚染され、水の入れ替えや手入れもされていないため、生き物が住みにくくなっていると女性は見解し語った。その表情はとても寂し気だった。
 「私もペットレスになったらどうしよう。」

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●理想の公園

 今回の記事ではこの女性をピックアップしてお話ししたが、もちろんたくさんの方々にご協力していただいた。そして中でもほとんどの方に共通して言えた理想が、「自然を生かした公園」ということだ。

 Q.あなたの理想の公園はどんな公園ですか?ー
 
 この質問を繰り返しながら、私は改めて、今のままの宝ヶ池公園で充分満たされているのではないかと思うに至った。それは、現地で実際にコミュニケーションをして、一番に利用者の心の豊かさが物語ってきた。もちろん、数十年前の公園の状態になるのが申し分ないが、大切なのは過去を振り返るのではなく未来へ向けてこれ以上緑を減らさず、池を汚さないということだろう。それが今住んでいる動物たちのためであり、常連の方々が何より望むことだろう。

 私も今の宝ヶ池公園が大好きです。

関連サイト:http://www.city.kyoto.lg.jp/kensetu/page/0000082746.html(京都市の公園情報・宝が池公園)