京都と歩むこれから/聖護院八ッ橋総本店 専務取締役鈴鹿可奈子さん(執筆:秀紗由佳)


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聖護院八ッ橋総本店のブランド「nikiniki」をご存知だろうか? 創業300年以上の老舗である聖護院八ッ橋総本店のイメージとは一転、ひとめ見ただけでは八ッ橋や生八ッ橋を販売しているとは思えない、そのおしゃれな店構えとポップで可愛い商品が注目を集めているブランドだ。nikinikiの商品は、四季のイベントにそってイメージされた八ッ橋や生八ッ橋のデザイン性や、種類豊富な味や色の生八ッ橋とこれまでにないような素材の餡やコンフィを自由に組み合わせ、カウンターで注文し、その場ですぐに食べられる斬新なスタイルが魅力的だ。そんな新しいブランドを立ち上げた専務取締役の鈴鹿可奈子さん。彼女は、専務取締役としての業務だけでなく、さらに講演活動も行い、2019年に開催予定の「第25回世界博物館大会」の京都での開催に向けた活動に尽力をされている。インタビューでは、これまでの講演活動や誘致活動を通して、伝えていることや感じてきたこと、これからについて伺った。

ーーーーー「nikiniki」を立ち上げた経緯を教えて下さい。

きっかけとなったのは、地元・京都の方は八ッ橋をお土産として人に渡すことはあっても、自分のために購入して召し上がることは少ないということを常々感じ、なんとかしたいと考えていたことです。

昔、母がプロデュースしていた八ッ橋を使用したスイーツをご提供する「カネール」というカフェがありました。そのカフェのメニューのひとつに生八ッ橋とリンゴのコンフィとを組み合わせたデザートがあり、とても美味しかったという子供の頃の思い出が残っていました。そのような新しい食材との組合せを通して、八ッ橋の新たな可能性を伝えたいという気持ちが頭の中にあり、社長から”なにか新しいことをやってみてくれないか”と言われて形にしたお店が「nikiniki」でした。

初めは、「生八ッ橋とこれまでにない新しい食材と組み合わせて食べてもらいたい」と、漠然としたイメージしか頭の中になかったので、いざ新しい店を出すとなった時はどう形にすればいいか悩みましたが、まずは私自身が欲しいと思うような、いわゆるお土産物じゃない八ッ橋を作ってみよう!と今の形になっています。従来のお土産物としての性質が強い聖護院八ッ橋総本店から販売するのではなく、全く違うブランドにした方がこれまで口にしたことが無い方に食べていただきやすいと考え、「nikiniki」を立ち上げました。

ーーーーーお店に訪れるお客さんは、京都に訪れる観光客の人が多いと思いますが、その中で気をつけていることはありますか?

会社として一番気をつけていることは、全てのお客様に疎外感を与えないということです。例えば、あえて海外の方に向けて箱に英語表記をしない、店内に英語や中国語表記を貼らないようにしています。表記してしまうと、海外の人には分かりやすく、販売スタッフも案内しやすくなりますが、日本の方はどう思われるでしょうか、また、海外の方の立場に立ってみても、例えば、私たちがパリに観光に行った時に日本語表記の商品を買わないように、お土産としては適さないと考えました。最近は特に海外の人たちに目がいきがちですが、残りの人たちを無視してはいけません。無視をした時点で、老舗として築き上げてきた信頼関係がくずれてしまうと思うのです。だからといって、海外の人に向けて何もしていないというわけではなく、元々ある商品を使って詰め合わせを変えて、ただその商品は空港や駅にのみで販売する方法をとっていたり、そのかわりに、販売員さんには外国語の説明文の用紙を渡すなどの対策を取っています。

そして、聖護院八ッ橋総本店とnikinikiも、観光客の人に向けたものと京都の人に向けたものという風に、きっぱり分けていることはしていません。そういうことは、京都全体にも通ずるところがあると思っていて、観光客の人たちに気持よく過ごしてもらうには、京都の人たちを巻き込まないといけないということを講演会でもよく伝えています。例えば、祇園祭は外からくる人が多いお祭りだけど、担っているのは町衆といわれる京都の人達で、“祇園祭は自分たちのお祭りだから、世界中の皆さんをお迎えしましょう”という気持ちがある。これから発信していく時は、地元の人を巻き込まないと成功しないと思います。街に対して愛着がなければ勝手に来て勝手に帰ってもらうことになるけれど、愛着があればお迎えしようという気持ちになりますし、気持よく過ごしてもらおうという気持ちになると思います。だからこそ観光客と京都の人を分けず、外からも誘致はするけど誘致をすると同時に、京都の人の意識を外に向け、「◯◯なお客さんは嫌だな」と思うではなく、そういったお客さんが私たちにとって良いお客さんになってもらうためにはどうすればいいかを考えていくべきだと思います。

ーーーーー京都に今、足りないものは何だと思いますか?

行政の方々の京都の人たちへの意識だと思います。京都は、街自体に歴史があり、人を呼ぶ魅力があるので多くの観光客の方が訪れます。そのため、観光客向けの対策はよくありますが、住んでいる人にとっては、交通渋滞など、不便に感じる部分が存在することは事実です。より良くしていくためには、京都に住んでいる人と話し合い、まずは住んでいる人が不便を感じず、京都に住み続けたいと思えるような街になればいいなと思います。そのことが結果的に、観光客の方が、また京都に行きたいと思っていただけるような街になることにつながると思います。

ーーーーーこれまでの講演活動や誘致活動についてお聞かせ下さい

あくまで本業は聖護院八ッ橋総本店の経営ではありますが、講演会では会社の経営や聖護院八ッ橋についていつも話していて、講演会をしていると色んな所からお声がかかるようになりました。その一例として、Do You Kyoto?大使を拝命したり、パリで世界博物館大会の誘致スピーチをさせていただきました。誘致スピーチで開催地を京都にするべき理由としては、「伝統的なものや習慣を大事に守っていくだけではなく、時代に合わせて生活に馴染ませ、守っていく。着物に例えると、引き継いでいける物として、一旦反物にして直せるという魅力や、だからこそ代々使え、そういったことが日常の中にあるということ。それが、当たり前のように感じられるからこそ、博物館の中だけでなく“生きた文化”が日常に溢れているこの京都に是非来ていただきたい」ということを伝えました。

ーーーーーこれからの活動についてお聞かせ下さい

まず講演活動のこれからについては、八ッ橋を知っていただいたり、興味を持ってもらえるいい機会なので、社内のお仕事に支障がない程度は続けていこうとかなと思っています。京都全体を応援する活動は、私自身京都で育ち、京都のことが好きなので、本当に大事にしたいと考えています。直接会社には関係がないものや時間がかかるものもありますが、こうした活動を通じつながっていく人脈、得る知識・情報があり、アイディアの源にもなっています。そうなると社内にも結果的には還元できます。また、伝統産業で物作りをされている方と出会う機会もあり、刺激になりますね。様々なジャンルの方と出会うことで、それぞれの仕事が重なり合い、プラスになるだけでなくもっと大きな相乗効果も生み出していくと感じました。このように、社内と社外に仕事がわかれているのですが、クロスオーバーして活かされています。

そして、聖護院八ッ橋総本店のこれからについては、八ッ橋というお菓子が残っていくこと、食べてもらえること、美味しいと言ってもらえることが大事だと思っています。100年200年経っても「八ッ橋美味しい」と言ってくる人がいて、ずっと私たちの会社が作り続けて、私たちの作る八ッ橋が食べてもらえるようにしたいという大きい目標があります。100年先のことを見るからこそ、ひたすら毎日美味しいもの地道に作り続けていくことが一番大切かなと思います。

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京都という場所を大切にし、地元の人たちとの繋がりを大切にする聖護院八ッ橋総本店の想いは代々受け継れており、これからも伝えていきたいという想いを感じた。長い歳月をかけて築き上げた京都の人との信頼関係こそ今も変わらず聖護院八ッ橋が愛され続ける理由のひとつではないだろうか。観光都市である京都をこれからも盛り上げ、伝統ある風景を守り続けていくためには、京都に住む私たちの「より良くしよう」という意識とそれを実行する行動力が重要である。