SUPというスポーツを通じて/越智博一さん(執筆:越智海人)


ochisanprof

「SUP」というスポーツをご存知だろうか。SUPとは「スタンドアップパドル」と言い、1960年代ハワイのワイキキのビーチボーイらによって生まれたウォータースポーツだ。サーフィンとは違い、大きなサーフボードの上に乗って、オールを使って漕ぐ乗り方が生まれた。彼らはそれに乗って泳いでいる人やサーフィンをしている人たちの写真を撮ることが、主な目的であった。ところが最近になりハワイのビーチボーイらによってトウ・インサーフィン(※1)の足腰の練習用に始められた。また、より沖からのテイクオフ(※2)もパドルを使うことによって可能になりロングボードのターンにもパドルがより有効な事が発見された。サーフィンから波を選ばないロングディスタンスクルージング(※3)も可能なスポーツとして、確立されたのだ。

SUPはスポーツとしてだけではなく、サッカー、野球、ラクビー等の選手の体幹を鍛えるため、フィットネス、ヨガ等にも使用され、スポーツと言うより一つのトレーニングや健康のための手段としての楽しまれ方も増えてきている。

■SUPとの出会い
今回取材したのは私の父である越智博一(おちひろかず)さん。彼は普段会社勤務で休日や合間の時間を使い海に出てSUPをしている。彼は兵庫県明石市の林崎松江海岸にあるSUPショップ「KuKahi(クーカイ)」にて日々SUPを楽しんいる。彼がSUPに出会ったきっかけは知り合いのSNSからだ。SUPの一番の醍醐味は老若男女、経験を問わずオールシーズン簡単に海の上をお散歩できるサーフスタイル。彼もここに惹かれ気軽にSUPを始めることが出来た。つまりSUPは家族でスキーやスノーボードに行く感覚で始めたその日から楽しめるスポーツなのだ。彼はそれから三年間ほどKuKahiの支援と共にSUPを続けている。

kukahi

■SUPという手段で
彼はここ最近SUPを通じた社会活動に力を入れている。KuKahiは関西で唯一のビーチを目の前にしたショップだ。ビーチの目の前に店を構えているということで単なるショップとしてではなくたくさんのイベントにも力を入れることができる。彼もその面でショップにたくさん関わっている。主に力を入れているのが地域の子供たちへの活動だ。サーフィンではなくSUPという手段で子供たちへの体験教室を積極的に行っている。そして子供だけではなく親も一緒に。野球、サッカー等のスポーツだと親と子供の両方が一緒に楽しめる機会は少ない、しかし、SUPが老若男女、始めたその日から楽しめるスポーツだからこそ、一緒に楽しむことが出来る。それだけではなく親子の仲が深まるとても良いきっかけとなるのだ。SUPには様々な大会も開催されている。野球、サッカーとは違い親子で大会に出場することも可能だ。彼自身はSUPを通じて出来る親子の仲にすごく可能性を感じ、積極的に体験教室を行っている。親子でどんどん始めていくとこのスポーツの知名度も一気に上がることは間違いない。そして中心的に教えている小学生。彼らの多くは何かで一番をとることにすごく喜びを感じる。野球、サッカーでは味わえない珍しいスポーツで一番を目指すこと、これに小学生自身もすごく興味を持ち続けてくれていることも多いようだ。

SUPの体験の他には、海で何かを楽しんでもらうというプログラムもたくさん実施している。ビーチフラッグや貝殻集めから海の近くでのバーベキューまでSUPだけではなく、海の近くに住む地域の人に海をもっと好きになってもらうような試みを積極的に行っている。海とともに生活するビーチライフの習慣が関西にはとても少ないようだ。湘南や鎌倉などではビーチライフが定着している。だからこそ関西でもその動きが活発になってほしいと彼は望んでいる。

■14年前の明石花火大会歩道橋事故
2001年7月21日に明石市大蔵海岸にて行われた第32回明石市民夏まつり花火大会で、歩道橋において発生した群衆事故がある。死者は11名、重軽傷者247名という悲しい事故が起こった。この事故から明石市では花火大会が一切開催されなくなった。この件についてなにか出来ることはないか考え、KuKahiと共に彼もたくさん考えた。そして去年8月30日(日)に行われたイベント「海で遊ぶこどもの日」。このイベントはKuKahiが主催となり夏休み最後の日曜日に子供たちに思い出を作ってもらいたいという思いからスタ―ト。そしてメインは花火大会だ。この花火大会は市販の玩具花火をスタッフ、地域のお父さんらによって火をつけ行うというもの。市販の玩具花火を花火大会の規模にするのは大変なことだ。しかし目的はその規模ではなく、この花火大会を通じて14年前の事故で犠牲になられた方々への追悼の気持ちを込めることだった。メインは花火大会だが昼からの開催でSUP体験、ビーチフラッグ、宝探し、ライブ、出店などたくさんの催しによって成り立っている。夏のイベントというと大体が7月~8月中旬までの開催が中心だ。だからこそこのイベントでは、子供たちの夏休み最後の思い出を作ってもらうということで8月最終日曜日となっている。開催は三回目で、毎年内容、来場者数共に増え、規模が大きくなってきている。去年の開催では神戸新聞にも取り上げられ、そして歩道橋事故の遺族の方々も来場した。

uminohi

このイベントは今年も8月最終日曜日に開催予定だ。彼は今年も運営の中心となって参加する予定だ。SUPショップ、SUPをしている人という枠を超え、地域の人たちのために何かを創り上げている彼の姿は、今までの自分の父とは思えないほど立派に見えた。

■取材を終えて
今回の取材で父が三年間もしてきたSUPについてやっとしっかり知れた。そして私自身「海人」という名前を付けられたことにも何かすごく意味を感じた。海でのスポーツを違う角度で見てみるとソーシャルデザインという言葉にすごく当てはめられることに気付かされた。私自身も父のように何かに熱中し、それが社会に繋がる何かだということに気付いてこれからも生きていきたいと強く思った。

(※1)水上オートバイに引っ張ってもらい波に乗るサーフィンのこと。
(※2)波に乗ること。
(※3)長距離、海に乗り続けること。