映画でつなぐ/京都国際学生映画祭実行委員 中村莉菜さん(執筆:久保彩巴)


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 映画をみるまえ、映画をみるとき、映画をみたあと。
 私が考えるのは大抵その映画の内容とか、出演している役者のこととか、アニメーション映画なら絵が綺麗だったなとか、キャラクターに合っていていい声だったな、とか。私だけでなく、おそらく大半の人が同じようなことを考えているだろうと思う。たしかに、その映画を見た上で監督の伝えたいことを汲み取った人たちが、社会に良い意味で影響を与えるような行動を起こしたりもすることはあるだろう。そしてそれが一種のソーシャルデザインになることもあるかもしれない。しかし今回は、こういったひとつの映画作品に影響されて起こるソーシャルデザインとしての行動ではなく、そんな映画を「提供する場」に目を向けて、そこで活動する人がどのような意図を持って、どのような活動をしているのかを取材してみることにした。

■映画にふれる
 今回、取材させていただいた私の友人である中村莉菜さんは、現在関西圏の大学に通っており、京都国際学生映画祭の実行委員を務めている。京都国際学生映画祭とは、京都を中心とする関西圏の大学生が中心となり企画・運営を行う日本最大の国際学生映画祭であり、毎年、11月下旬頃から1週間ほどかけて本祭を行っている。なんと、日本でいくつかある学生映画祭の中でも、世界中の作品を扱っているのは京都国際学生映画祭だけだということ。今年で20回目の開催だそうだ。
 普段の活動内容としては、11月下旬に行われる本祭に向けて、世界中の学生の映画・映像作品の募集、審査や、協賛依頼、広報活動等が主だ。さらに本祭以外にも「初めての学生映画」と題して、京都学園大学で行われる「京都学生祭典」のプレイベントにブースを借り、過去に受賞した学生映画の上映活動も行っている。これは、本祭のことを知ってもらうという広報目的の他に、馴染みのない人にも学生映画に親しんでもらうきっかけになれば、との考えから行っているそうだ。実際、普段あまり映画を見ない人でも見やすいような内容のものを選んだり、子供にも見てもらえるようアニメーション映画を取り入れたりといった工夫もされている。
 本祭はもちろんだが、それ以外の活動でも学生映画(しかも世界中の)に触れる機会を作り出し、作品と人とをつなぐという点では、この時点ですでに文化交流の機会を作り出しているといえる。
 中村さんが映画祭実行委員になったのは、「大学で映画に関する講義を受け、映画に興味を持つようになった」ことがきっかけだったそうだ。もともと学生映画を通して交流の機会を作りたいと考えていたわけではないのだろうが、結果的に自分の興味があることでそれを生み出しているというのは素晴らしいことではないだろうか。

■京都というまち
 また、このような上映企画や映画祭を京都で行っているという点にも注目してみたい。
 関西圏の中でも特に学生が多く、「学生のまち」とも呼ばれる京都。だからこそ、この映画祭を学生の視点で主体となって運営することができ、さらに映画のこれからを担っていく人材を育てることもできるのではないだろうか。さらに、世界中の作品の中から映画に新たな領域を加え得る才能を発掘・紹介するという活動の中で、中村さんは「映画によって国際交流や相互理解の場を創出することを目的としている」とも話していた。京都は学生同士の交流もあり、文化的な施設等も多く、海外から来る人も多い。京都だからこそ創出できる交流の場を設けることで、それが京都を活性化させることに繋がるのではないだろうか。

■取材を終えて
 世界中の若手映画作家の発掘、支援を行い、様々な上映の機会を用意することによって、映画による文化交流・国際交流の場を作り出す。
 これまで、映画は個人の中で楽しんできた自分にとって、そもそも映画と社会をつなげて考える、ということ自体したことがなかった。冒頭で書いたように、例えば社会風刺のような内容の映画を見て、それについて少し考える、といったようなことくらいしか。
 私は映画が好きだ。今回このような取材をしてみて、映画によってこのように交流の場を作り出すことにとても魅力を感じた。そしてなにより、本当に身近なところでこのような意図を持って活動していることに気づくことができた。今年の映画祭にはぜひ足を運んでみようと思う。

参考サイト:http://www.kisfvf.com