社会を知ってもらう活動/「あいナナ企画」高橋藍さん、横田奈那さん(執筆:水野加奈子)


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 去年(2016年)、京都精華大学内で「あいナナ企画」という企画のもとで、2回に渡り映画の上映会が開かれていたことをご存知だろうか。「なぜ普段着る服はあんなに安いの?」という服をテーマに行われた企画(7月)と、「そのごはん大丈夫?」という食をテーマにした企画(11月)だ。そのどちらもが社会問題を扱った内容の作品を上映しているのが特徴である。今回はその「あいナナ企画」の主催者である、高橋藍さんと横田奈那さんに取材をした。

■社会に対する違和感を伝えたい
彼女達は、京都精華大学ポピュラーカルチャー学部でファッションのことを学ぶ学生だ。あいナナ企画の発足には、とある映画を2人で観に行ったことがきっかけとなっている。その映画が、第1回目の企画「なぜ普段着る服はあんなに安いの?」でも上映され『ザ・トゥルー・コスト』だ。この映画は、ファッション業界の大量生産、大量消費の問題に目を向け、ファストファッションの裏側に潜む過酷な労働環境を描いたドキュメンタリー映画だ。彼女達は、ファッション業界が抱える問題を知っていたが、この映画を見ることで現実味が増しより身近に感じたという。自分達にとってファストファッションは普通であるが、そのせいで困る人々が出てくるという現状が当然になっているのはおかしい、という社会に対する違和感が形となり生まれたのが、あいナナ企画なのだ。
 こうした違和感は、第2回目の「そのごはん大丈夫?」にもつながっている。この上映会では食に関する内部被曝がテーマだったが、その背景には、3・11以降の「食べて応援(被災地の支援を目的に、被災地産の食品を消費する運動)」という世間の風潮に疑問を持ったことが関係している。放射能で汚染されたものを食べること自体が被曝に繋がるのに、それが応援という形で広まっているのは危険ではないのか。疑問を感じた二人は、このことを多くの人に考えて欲しいと、企画を立ち上げたのだ。

■自分の考えが受け入れられるとは思わない
 彼女達は、幼少期から社会的な側面に触れることが多かったそうだ。高橋が社会問題に関心を示すようになったのは、両親の活動が大いに関係している。医療関係者である高橋の両親は、病気であるにも関わらず受診できない人々の存在を知り、社会問題に関心を持ったそうだ。その背景もあり、そういった話題が家族内の会話で自然と組み込まれていた。そして横田は、小学生の時に親からの影響で貧困についてのテレビ番組を見た際に、今日を生きることに必死な人々がいることを知り、社会で困っている人々を救いたいと思ったという。2人ともこういった環境で育ったからこそ、社会問題を提起するこの企画を行うことに抵抗がなかったそうだ。しかし、政治や社会についての話題は日常では流されやすい。その為、「自分の考えていることが全員に受け入れられるとは思っていない。どうやって興味をもってくれるかを考えた時に、自然とあいナナ企画が浮かんだ。」と高橋は語る。
 現に彼女達は、興味を持たせるような工夫を凝らしている。その一つが映画上映という手法である。ただ座って見ているだけで、決まった時間の中で全ての情報が入ってくるということが利点だそうだ。もう1つのこだわりは、シャツやおにぎりの形をしたフライヤーだ。この特殊な形状には、見て終わりではなく手元に残して欲しいという意図が込められている。また、興味を持たれないものにもファッションという概念、つまり華やかな要素(フライヤーでいう形状や紙の材質、フォント)を取り入れることで、関心を持たせられるのではないか。こういったアイデアは、彼女たちが所属するファッションコースならではの思想に基づいている。

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■知らないことを知るのは大きいこと
今や情報社会と呼ばれる世の中だが、その流れてくる情報が本当に正しいのかは分からない。普通だと思っていることが実は普通でないということが起こり得るのが現代だ。あいナナ企画は、そういった普通をそのまま受け止めるのではなく、1歩引いた目線を持ってもう一度考え直してみるという場を与えている。しかし彼女達は、敢えて受け手の意見に踏み込んだりはしない。それは、受け手の自由を尊重しているからだ。受け手側が見て感じたことを今後の生活にどう活かしていくかが重要だという。

■今後の活動について
「あいナナ企画」は、2人の間に共通する問題意識がなければ企画されない。今までの企画は、2人の視点が必要であったからこそ生まれたものであり、今後についても2人でやる必然性がない限りは行わない方針だそうだ。そのため3回目となる企画はまだ未定。
 そして、現在3回生の彼女達に将来もこういった活動を続けていきたいかを伺ったところ、形は違えども2人から肯定的な返答を受け取った。やはり彼女達の根底にはソーシャルデザインの精神が刻まれているのであろう。

■取材を終えて
 今回、取材にあたり彼女達を選んだのには理由がある。それは、自分自身と社会の繋がりを再認識するためであった。今までの私は、自らの意思で社会のための活動をした経験がほぼ無い上に、社会問題についても知識が浅くつまらないものとして捉えがちであった。しかし、彼女達の話を聞き、社会に対する意見を持つことの重要さを学ぶことができた。それはどの質問に対しても、しっかりとした考えを述べる二人の姿に感銘を受けたからである。私も、彼女達のように軸のある人間になりたいと考える。その為には、社会に関する話題を他人事と思わず、何が問題なのかを調べるところから始めていきたい。

参考サイト:https://www.facebook.com/yokotakahashi00/