盆栽から伝わるもの
「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」の会場には盆栽や植物が展示されている。盆栽にはどのような意味が込められているのか。
1週間~10日ほどで入れ替えられる盆栽の選定は、盆栽研究家の川﨑仁美さんによるものだ。ブライアン・イーノのアンビエント音楽では流動的な自然の動きを表現しているため、そのコンセプトに合わせて盆栽や水石を取り入れている。展示空間全体に関しても、今回のために塗り替えられた館内の壁には、日本の伝統色によって日本の四季の色が表現されているなどの工夫が凝らされている。
3F The Ship 前には、赤松や黒松、杜松などが展示されている。それらは、樹齢が70年以上、長くて120年のものもあり、その歴史の長さとしなやかさに驚かされる。2Fのラウンジ前のスペースには、姫しゃらや百日紅、山紅葉やさっこう藤などが展示されている。2Fと3FのThe Ship前の階段には、鞍馬石の菊花石や唐石、瀬田川石などが展示されている。
期間中の3ヶ月間ずっと置かれていた、The Ship横の鞍馬石の菊花石には特別な意味が込められている。川崎さんはこの菊花石に、「氷山」という名前を付けている。 The Ship はタイタニックの沈没事件に対する人間の傲慢さに対する警鐘の展示でもあるため、タイタニック号が衝突した「氷山」を置くことによって、入場する前に警告を促してるという意味づけがあるそうだ。
展示会場で突如目に入る盆栽は、どれも迫力満点で思わず足をとめて見入ってしまう。松の盆栽はどれも、幹が曲がりながら形を描き、幹肌が荒れている。細部にかけて手入れはされているものの、自由な自然の生を感じることができる。松葉を綺麗に保つために、根元が踏ん張って支えている様子がなんとも愛おしい。石は、どっしりと構えたその姿に強烈な存在感を感じる。そして何より、京都に根付いている自然を採用していることで、展示の場としての京都だけで終わらない。アンビエント、自然、そして京都の魅力を再発見して持ち帰ることができる会場づくりが魅力的だ。これらも「The Lighthouse」に趣を添える重要な展示の一部なのだ。
(文/西村紬)
ブライアン・イーノ展 主宰 Traffic代表・中村周市氏インタビュー