大概日々 /

自分事、他所事、他人事。平山夢明

平山夢明について、今更書くこともないように思える。作家、ホラー小説作家として、最近だと映画化した「diner」の原作者としても有名だろう。

そんな平山夢明の短編集「他人事」をだいぶ前に読んだ、初めて平山夢明の作品を読んだが。すこぶる面白く、またすこぶる胸が悪くなった。

鬼畜系等と言われる平山夢明は、とにかく酷い暴力に見舞われる作風で有名だ。氏の「独白するユニバーサル横メルカトル」に掲載されている短編を映画化した「無垢の祈り」は映画の出来はとても良かったらしいが、幼児虐待がテーマということもあり、あちこちの映画祭で出展を断られ続けたらしい。

私は心臓が弱いので見ていないので、興味がある人は独自に見てください。忍者と極道の作者である近藤信輔が感想ツイートしていた気がする。忍者と極道(めちゃくちゃ面白い)もチャイルドアビューズの描写が中々凄かったので、納得するところがありますね。

ともかく、そんな作者が書く「他人事」を読んだ。交通事故を起こし瀕死の重症を負った男女の懇願をタイトル通り他人事のようにのらりくらりと適当にあしらう表題作から始まり、引きこもりの息子を殺そうと決意する初老の夫婦。定年退職した途端同僚、部下周りの人間に手酷い暴力を見舞われ殺されそうになる男。等、酷い暴力に見舞われる話ばかりだ。

どれもこれも、何故こんな酷いことが行われているのかわからない。ただただ酷いとしか言いようがない暴力が突然人を襲い、その人をめちゃくちゃにし、時には平然と命を奪い、去っていく。どこか自然災害のように。そしてその暴力、拷問と言ってもいいかもしれないが。の描写は卓越している。本当にそれが行われている情景が想起され、私はすごい気持ち悪くなりながら読み進めた。

だが読んでいくうちにその気持ち悪さ、酷さに思わず笑いそうになってしまえる(次の瞬間にはまた吐き気を催しているが)

全く理解ができない突然の暴力性、だが何処かにこのような人がいるのかもと思えてしまう恐怖。それを心の奥底まで刺さるような描写で描き出したこの作品、良くも悪くも心が揺さぶられ、もう読まないな。と思いながらも、もう一度、それか別の作品を……と思ってしまう魅力もある。これだけ人の心を動かす本作、読んだことがない方は一度チャレンジしてみるのも一興ではないだろうか。

ちなみに私は耽美系や少しグロテスクな作品(少女椿とか)が好きな方に一度貸したが、無理だった。と言われ全然読まれずに返ってきた経験があるので。チャレンジする際は、図書館で借りるとかの方が良いのかもしれない。

(文 / 丸橋)