京都精華大学ポピュラーカルチャー学部

ファション

音楽

2015・2・3授業紹介

音楽学科

ポップスの考古学 ―― 細野晴臣客員教員特別講義第5回

 ポピュラーカルチャー学部客員教員である細野晴臣さんの今年初めての特別講義が、1月20日に開催されました。今回は90分の講義を2部形式にして、後半では翌日からのスチールギター・ワークショップのために来校されていた高田漣さんがゲストとして登壇。対話形式で話が進められました。

hosono 2013年の学部開設から今回で5回目となる特別講義の共通テーマは、細野さん自身が体験してきた音楽の歴史を学生世代の若い人に伝えること。そこから、細野さんが影響を受けてきたアメリカの音楽や文化にどのように向き合うかという問題が見えてきます。これまで「戦争の記憶」「レコーディング技術の変遷」といった話題を経て、今回のキーワードは「歴史の特異点」。ポップスの歴史には残っていないが、地層を掘り起こすことで現れてくる特殊な存在。そんな考古学に細野さんは取り組んでいるそうです。
 特異点として挙げられた一つ目は、アメリカのミュージカル番組を日本に持ち込んだ井原高忠の1950〜60年代の活動。戦後にワゴンマスターズというカントリー・バンドで活動した井原は、日本テレビに就職して『ペリー・コモ・ショー』などアメリカの音楽番組を日本に輸入。後に『光子の窓』など音楽バラエティ番組を手掛けました。プロ野球シーズンには『ペリー・コモ・ショー』が放送されなくなってしまうため、細野さんは雨で試合が中止になることを願う野球嫌いになってしまったという話。
 もう一つの特異点は、細野さんが岡田崇さんと続けている音楽の発掘作業から。紹介されたのは、映画『骨まで笑って』で知ったというレイモンド・スコット(Raymond Scott)「ペンギン」と、岡田さんがVディスク(第二次世界大戦中に米軍が戦意高揚のために制作したアナログレコード)から発見したというハル・ハーゾン(Hal Herzon)「ロボット」。特に「ロボット」はほとんど知られていない音源とのこと。

 休憩を挟んで高田さんも加わり、細野さんが高田さんにインタビューするかたちでやりとりが繰り広げられました。細野さんは「初めて意識して楽器を弾いたのは」「初めてのキスは」など、「初めて」についての質問を連発。その後、前半の話題をお二人が振り返る中ではっとしたのは、「かつてバンドとお笑いがつながっていた」という細野さんの指摘。音楽バラエティ番組から人気が出たクレイジー・キャッツやドリフターズは、バンドであると同時にコメディアングループでもありました。「テレビの創生期にはリズム感のいい人を集めたけど今は分かれちゃったんだよね」と細野さん。関西でも70年代後半、誰がカバやねんロックンロールショーがいたことを思い出しました。
 講義の締めくくりに、細野さんが去年、高田さんたちと音楽コースの MagiSoundStudio で録音したブギの曲をかけてくださいました。細野さん曰く「スタジオは使えば使うほど音が出るので、皆さん使ってあげてください」とのこと。大事に使いたいと思います。

イラスト: 寺岡奈津美