ファッションデザインは誰のためにするものなのでしょうか。しばしばファッションはデザイナーの自己表現だと言われますが、そうして作られた服で人を幸せにすることは難しいようにも思われます。
よくよく考えてみると、1着の服には驚くほどたくさんの人が関わっています。たとえばコットンのシャツについて主要なところだけ取り上げたとしても、綿花を育てる人、収穫された綿花から糸を紡ぐ人、その糸から生地を織る人、シャツをデザインする人、型紙を引く人、生地を裁断して縫う人、完成した商品を売る人、そしてそれを買って着る人がいます。一着の服から多種多様なつながりを見いだすことができるのです。そう考えると、ファッションは環境や経済、文化や政治などさまざまな領域に深く関わっていることがわかってくるでしょう。つまり、ファッションは意識しようがしまいが人や社会に影響を与えるものなのです。
本コースでは、ファッションを通じて人を幸せにし、よりよい社会を作ることのできる人材を育てることを目指しています。
※ 講義科目や学部共通科目も含めた開講科目の詳細については、科目紹介ページをご覧ください。
希望進路に関係なく、まずは全員が「ファッションを作る」「ファッションを届ける」両方の実習を履修。これまで「好き」「楽しい」という感覚で接してきたファッションに、より深く関わっていくための力を養う。
「作る」実習 単に服を作るのではなく、デザインとはどのような概念なのかを踏まえたうえで、衣服制作を通して、服の基本構造及びデザインに必要な視点のあり方について学ぶ。既存の服の構造やディテール、素材などを観察、分析して、自身の作品として再構築する。
「届ける」実習 そもそも何のために服を作るのか、誰に対してどのような服を作るのかそうしたことをリサーチを踏まえ考察し、デザインと結びつける力を身につける。それぞれ対象に応じたリサーチの方法やデザインのまとめ方を複数の課題設定を通じて学ぶ。
希望する進路や関心にもとづいて2つの実習クラスを組み合わせ、将来のイメージを固める。与えられた課題をこなす中で「この力を武器にしていこう」という手応えを得る。
ファッションデザイン 自身のスタイルに応じたデザインポイントの作り方を確立し、ポイントを生かしたデザイン展開の方法を学ぶ。
パターンメイキング 1年次に習得したパターンや縫製の基礎を踏まえ、自身のシルエットやディテールバランスを形にできる応用力を身につける。
ファッション批評 様々なブランドやデザイナーを考察し、その価値やファッションにおける位置づけを把握し文章にする力を身につける。
雑誌制作 オリジナル雑誌の制作を通して、ファッションを届けるための思考方法とその実践力を身につける。
2年次に見つけた自身のスタイルをベースに、専門とする分野を決める。専門性に沿って作品や仕事の質を向上させ、社会に向けて問うてみたいファッションや文化のあり方を探究する。
アパレルデザイン 教員を中心に一つのブランドを設定し、グループワークで商品サンプルづくり。アパレル企業におけるデザインや仕事の進め方を学ぶ。
コレクション制作 ターゲットの設定から、コンセプト、企画構成、サンプル制作までトータルに取り組み、自身のブランドとしてのコレクションを制作する。
ブランディング マーケティングに対する理解を深め、ファッションの世界でビジネスとして通用するブランディング戦略の立て方を学ぶ。
キュレーション ファッションの現状を理解し、今もしくはこれから伝えるべき情報を収集及び編集し、効果的な見せ方を提案できる力を身につける。
入学からの学びによって何ができるようになったのか、そして世の中に対して今何をすべきかを考え、自分が決めたテーマにもとづいて卒業制作(または卒業論文)を完成させる。必要に応じて人の協力を得ながら、作品制作やイベント、論文執筆に取り組む。服の制作、ブランディング、学外への流通や広報など、学生同士で役割分担した共同プロジェクトも可能。
卒業制作のイメージ コレクション制作/オリジナルブランドのアパレル商品の企画制作/パターンメイキングの技法を用いてシルエットにこだわった服の制作/ファッション雑誌の企画制作/インターネットを使ったファッションブランド広報・販売方法の提案と実地検証/ターゲットを定めた期間限定ショップの企画と運営
卒業論文のイメージ 既存ブランドの考察と批評/ファッションデザインに関する歴史研究
本コースのカリキュラムに沿って真剣に学びさえすれば、アパレル企業で即戦力となりうる知識と技術を身に着けることも可能です。しかしながら、ファッションを通じてよりよい社会を作るという目標のためには、皆がファッション業界に入ればそれでよいというわけではありません。
衣食住ということばがあるように、ファッションは人間の生活において必要不可欠な要素のひとつです。それゆえ、本来はどのような仕事に就いたとしてもファッションは必ずそこに居場所を見つけることができるはずです。ファッションを学んだ人たちが多方面に進出していくことにより、ファッションを通じてよりよい社会を作るという目標を達成することができるようになると私たちは考えます。
また、既存の日本のファッションのシステムでは、あらゆる仕事が東京に集中しており、地方でファッションを仕事にするのはショップ経営者や販売員など一部を除いて難しいと考えられています。しかし、現在仕事がないというのは逆に考えれば仕事を作る余地があるということです。ポピュラーカルチャー学部では既存のシステムに乗るだけでなく、新しく仕事を作るための理論や実践を学ぶ授業もあります。そうした学びをもとに、各自が卒業後に自ら仕事を作り出せるようになることを期待しています。
2013年度に開設された京都精華大学ポピュラーカルチャー学部は、音楽とファッションという二つの領域で、既成のジャンルや産業の仕組にとらわれず、それまでにないスタイルや価値観を打ち出せる人間を育てていきたいと考えています。
「音楽が好き」「ファッションがやりたい」という熱意を、社会の現状をとらえ、問題を発見し、今までにない新しい文化を生み出す力へと変換する。その力は音楽やファッションの専門家になることに留まらず、納得のいく生き方や働き方を見つけることにもつながっていくでしょう。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 英語 | 英語 | 講義(教養) | ||
2 | 講義(教養) | 講義(教養) | スポーツ | ||
3 | 基礎実習
(情報発信) |
基礎実習 (DTM) |
講義(音響工学) | 演習 (ボイトレ) |
|
4 | 演習 (セッション) |
演習 (レコーディング) |
|||
5 |
音楽コース1年次後期時間割例
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | |||||
2 | 講義(教養) | 講義(副専攻) | 講義(副専攻) | 講義(教養) | 画像ソフト演習 |
3 | 制作実習 (パターン) |
制作実習 (ファッションデザイン) |
講義(造形論) | 講義 (アパレル素材論) |
演習 (ファッションビジネス) |
4 | 演習 (プリント) |
||||
5 |
ファッションコース2年次前期時間割例
ポピュラーカルチャー学部では、午後の授業時間を丸ごと使った実習科目を中心にカリキュラムを構成しています。1年次では経験の有無や希望進路に関係なく、服や音との接し方を基礎から徹底的に養います。自分にとって何が武器になるかを前半の2年間で見極めた上で、3年次からは専門領域に特化した実習を選択します。そして卒業制作では、各教員の指導のもと、自分が実現したいプロジェクトを計画段階から作り上げます。
選択科目として、専門性を補うための演習科目も多数開講されます。自分の目指す方向に合わせて専門性の高い技術を集中的に学べる「領域横断演習」、コンピュータソフトなどのスキルを身につける「メディア制作」、学生自身がさまざまなプロジェクトを実行する「企画演習」などを通じて、実際に身体を動かして学ぶことを重視しています。
もちろん各コースの高度な専門知識や最先端の発想が学べる講義科目も用意されており、他学部開講科目や教養科目、語学科目も履修できます。実習を通じて感覚を研ぎすましていれば、講義を聴いて自分の世界を広げる意義も、より深く実感できるはずです。
※各科目の内容については「科目紹介」をご覧ください。
2014年4月に完成した、ポピュラーカルチャー学部のための校舎。
音楽・ファッション各コースの実習室のほか、音楽コースではレコーディングスタジオと練習室、ファッションコースでは個人の制作スペースに用途別の特殊ミシンを備えています。
約500人を収容できる多目的ホール。7.2chサラウンドのAV環境を備えた、キャンパス最大のイベントスペースです。ライブイベントや講演会、音楽とファッションを融合させたワークショップなど、さまざまな催しを企画することができます。
1. 多目的ホール「agora」
ファッションコースの実習室では、自然光のもとで素材本来の色を見ながら制作できるよう、壁にはガラスが多く使われています。個人の制作スペースは空間を隔てることなく配置され、学年を越えた交流が生まれる設計になっています。
用途別の18種類の特殊ミシンを完備。トルソーは一体ごとに異なる体型のモデルを揃えており、人間の身体は一つとして同じでないことを意識しながら服をつくることができます。
1. ファッションコース制作スペース
2-4. ファッションコース実習室
5. 資料室
音楽コース1年生の実習室および、両コースの教員が揃う総合教員室や個人研究室があるフロア。4年間をともに過ごす教員と交流を深めるためのオープンな空間です。少人数でのワークショップや作品展示を行えるプロジェクトルームも併設されています。
1-3. 音楽コース1年実習室
4-5. プロジェクトルーム
6. 総合教員室
7-14. 各教員研究室
15. 資料室
音楽コース2〜4年生の実習室が並び、授業時間以外もホームルームとして使用できます。大部屋の実習室には防音仕様の可動壁も設置されています。
いつでも演奏や録音を行えるよう、マイクやアンプ、ミキサーなどの機材を完備。また、大型モニタースピーカーを使い、ヘッドフォンや自宅環境では出せない大きくはっきりした音で作品を制作できます。
1-3. 音楽コース2年実習室
4. 音楽コース3年実習室
5. 音楽コース4年実習室
故・佐久間正英(2014年1月まで本学教員)が設計に携わったレコーディング・スタジオは、ドラムの低音をしっかり反響して録音できるようレンガが積まれているなど、楽器ごとの音響特性にあわせた環境になっています。響きの細部に徹底的にこだわることで、音楽制作に必要な耳が鍛えられます。
練習室は機材を完備しており、楽器練習のほかデモ音源の録音も行えます。
1,8-11,15 練習室
2-7 Magi Sound Studio
12 音楽コース機材庫
13-14 演習室
16 資料室