「サウンドをネタにする」という発想と手法
担当者: 谷口文和
20世紀以降に登場した音楽ジャンルの多くは、録音技術を駆使することで新たな表現を生み出している。その中でも興味深いのが、既存のサウンドを流用する、いわゆる「ネタにする」という発想である。この講義では、DJやサンプリングといった音楽実践に着目し、古典的な「創作」とは異なる「編集」という観点から、表現のあり方や価値観を読み解くことを試みる。
前半では、サウンドの流用という手法の土台となっている録音などの音響メディアの歴史をたどりながら、DJやサンプリングの実践が具体的に何を行っているのかを確認する。次に、レゲエやヒップホップ、ワールドミュージックなど、DJの手法にもとづいた音楽ジャンルを概観し、そこでのサウンドのとらえ方や「ネタ」をめぐる価値観について考察する。最後に、クラブやインターネットを主な舞台とする現在の音楽を取り上げ、DJ的発想がどのように展開しているかを論じる。
各回の授業は、音楽ジャンルの歴史や音楽制作の手法を紹介しながら、共通テーマにもとづく論点について受講生と議論するかたちで進める。この議論を通じて問題意識を深め、各自で選んだ題材について考察するレポートを作成することを目標とする。