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私たち——佐藤守弘(視覚文化研究、同志社大学文学部)、安田昌弘(音楽社会学、京都精華大学メディア表現学部)とdj sniff(水田拓郎、ターンテーブリスト/サウンド・アーティスト、京都精華大学国際文化学部)——は、2020年2月に「UNPOPULAR POP――脱マスメディア時代のポピュラーカルチャー」というシンポジウムを行いました。そこで行ったのは、ポップカルチャーとアートの境界を溶解させるような活動・研究を行っている人びとを迎えて、現代のポップカルチャーを問い直すという試みでした。今回の「UNPOPULAR POP 002」は、そこでの問いをさらに深めるために、さまざまな領域で、ジャンルのくくりを超えて活動する制作者たちの声を聞いていきたいと思います。

形容詞としての「ポップ」とはいったいなんなのだろう? それが前回の「UNPOPULAR POP」を行う中で浮かんできた疑問です。語源的に見ると、それは「民衆的」and/or「人気がある」という意味の“popular”の略語とされます。となれば、“pop”と“popular”は互換可能な言葉となるはずです。しかし、“pop”には、“popular”にはないコノテーションがあります。私は、前回それを「つかの間の多幸感 transient euphoria」と名付けてみました。でも「ポップ」には、それでは収まりきれない広がりがありそうです。

“Pop”に“unpopular”という形容詞を付けることは、「ポップ」から“popular”の要素を切り離すことになります——「批判的ポップ critical pop」と呼んでもいいかもしれません。その時、ポップには残るものはなんなのだろう? 「UNPOPULAR POP 002」では、こういった問いを追求するため、ポップの臨界点 critical pointで活躍するゲスト——三重野龍(グラフィック・デザイナー)、田中克海(音楽家、民謡クルセイダーズ)、テンテンコ(アヴァンギャルド表現者)——を迎え、3回連続でオンライン開催したいと思います。

佐藤守弘

*本研究はJSPS科研費 JP19H00517「脱マスメディア時代のポップカルチャー美学に関する基盤研究」(研究代表者:室井尚〔横浜国立大学〕)の助成を受けたものです。

第1回 〈もじ〉の境目——三重野龍

問題提起動画●三重野龍×中村祐太×佐藤守弘

日時:2021年12月3日(金)
●19:30〜 ライブディスカッション配信用URL
ゲスト:三重野龍
コメンテーター:中村裕太(美術家、京都精華大学芸術学部)
ホスト:佐藤守弘1

本セッションでは、事前に問題提起動画を公開し、それに基づいて19時30分より直接ディスカッションを行いますが、当日18時50分より問題提起動画を配信用URLにて再配信いたします。

三重野龍
1988年兵庫県生まれ。 2011年京都精華大学デザイン学部グラフィックデザインコース卒業。卒業後、京都にてフリーのグラフィック・デザイナーとして活動を開始する。美術や舞台作品の広報物デザインを中心に、ロゴやグッズなど、文字を軸にしたグラフィック制作を実践。

中村裕太
1983年東京生まれ、京都在住。2011年京都精華大学芸術研究科博士後期課程修了。博士(芸術)。京都精華大学芸術学部特任講師。〈民俗と建築にまつわる工芸〉という視点から陶磁器、タイルなどの学術研究と作品制作を行なう。

第2回 フォークとポップの間——民謡クルセイダーズ

問題提起動画●田中克海×安田昌弘

日時:12月17日(金)
●19:30〜 ライブディスカッション配信用URL
ゲスト:田中克海
ホスト:安田昌弘2

本セッションでは、事前に問題提起動画を公開し、それに基づいて19時30分より直接ディスカッションを行いますが、当日18時45分より問題提起動画を配信用URLより再配信いたします。

田中克海
1971年岡山県生まれ。民謡クルセイダーズのリーダー/ギタリスト。福生のいわゆる「米軍ハウス」に住み、福生のポップカルチャー的求心力のなかで民謡とラテン音楽の融合という地脈を掘り当てた。2013年頃民クルを始動し、数年の模索を経て今の10人編成にたどり着いた。フジロックやピーター・バラカンのLive Magic!のほか、WOMADにも出演し、国内外で高い評価を受けている。

第3回 アンダーグラウンド・ポップ——テンテンコ

日時:1月21日(金)
●19:30〜 ライブディスカッション配信用URL
ゲスト:テンテンコ
コメンテーター:野中モモ(文筆家、翻訳家)
ホスト:dj sniff3

本セッションでは、問題提起動画の事前公開はありません。

テンテンコ
東京を拠点とするエレクトロニクスソロミュージシャン。 2013年から2014年まで,アイドルグループBiSで活動し、解散後ソロプロジェクトを始める。 ソロの他に、伊東篤宏とのユニット”ZVIZMO” 、T.美川(非常階段, INCAPACITANTS)との”MikaTen”、 KΣITOとの”幡ヶ谷ちっちゃいものクラブ”でも活動中。
2019年5月 TAL(DE)からコンピレーションLP”Paredo”に参加。
2019年10月 φonon(JP)からCDRベストアルバムをリリース。
2019年11月 TALからKOPYとのスプリットEPをリリース。
2021年3月 TALからソロ作品”An Antworten EP”をリリース。
2021年7月 φononからCDRベストアルバム第二弾リリース。

野中モモ
東京生まれ。翻訳(英日)およびライター業に従事。訳書にヴィヴィエン・ゴールドマン『女パンクの逆襲 ―フェミニスト音楽史』(ele-king books)、レイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社)、キム・ゴードン『GIRL IN A BANDキム・ゴードン自伝』(DU BOOKS)、アリスン・ピープマイヤー『ガール・ジン「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア』(太田出版)などがある。著書に『デヴィッド・ボウイ変幻するカルト・スター』(筑摩書房)、『野中モモの「ZINE」小さな私のメディアを作る』(晶文社)』。


  1. コロンビア大学大学院修士課程修了。同志社大学大学院博士後期課程退学。博士(芸術学)。芸術学・視覚文化論専攻。著書に『トポグラフィの日本近代―江戸泥絵・横浜写真・芸術写真』(青弓社)、『記憶の遠近術~篠山紀信、横尾忠則を撮る』(共著、芸術新聞社)など。最近の論文に「産業資本主義の画像=言語――写真アーカイヴとセクーラ」(『PARASOPHIA京都国際現代芸術祭2015[公式カタログ]』)、「キッチュとモダニティ――権田保之助と民衆娯楽としての浪花節」(『大正イマジュリィ』)など。翻訳にジェフリー・バッチェン『写真のアルケオロジー』(共訳、青弓社)など。2012年、芸術選奨新人賞(評論等部門)受賞。
  2. 京都精華大学ポピュラーカルチャー学部教授。英レスター大学マスコミ研究所(CMCR)で日仏ヒップホップ文化の研究を行いPh.D.取得。欧州での経験を活かし、現在は関西、特に京都の音楽シーンについてフィールドワークやフランスにおける日本のポピュラーカルチャー受容の研究を行っている。論文に「京都とブルースはどう結びついているか─文化のグローバル化とせめぎ合う空間性」、訳書に『ポピュラー音楽理論入門』、『ポピュラー音楽をつくる』、共著に『ポピュラー音楽へのまなざし』、『The International Recording Industries』、『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』など。
  3. ターンテーブル奏者、DJ、キュレーター。ニューヨーク大学で修士課程修了後、オランダSTEIM電子楽器スタジオ、香港城市大學School of Creative Mediaでの役職を経て現在は東京に在住。大友良英、シンガポールのユエン・チーワイとともにアジアン・ミーティング・フェスティバル(AMF)のコ・ディレクターを務めている。
    http://www.djsniff.com/