2015・2・23授業紹介
ファッションコースの「制作実務研修4」(担当:西谷真理子)は、大学卒業後に目指すべき仕事について理解し、将来の設計図を描くことを目的とする集中講義科目です。今年は2月4日から10日まで5日間かけて行われ、ファッションやその関連業界で活躍するプロを連日ゲストに招いて授業を受け、ワークショップを行いました。受講生の米田真理子さんによる各回のレポートを掲載します。
その1: 人とモノとをつなぐ場の作り方
井辻康明さん(ジェイアール京都伊勢丹バイヤー、ヤング担当)
その2: みんなの「素敵」を形にする
加藤智啓さん(ブランディングディレクター、EDING:POST主宰)
その3: 伝え方一つとってもブランディング
植原亮輔さん(グラフィックデザイナー、AD、KIGI主宰)
その4: 「動き」を客観的に読む
青野賢一さん(ビームス創造研究所/ビームスレコード各ディレクター)
4日目は、グラフィックデザイン・アートディレクションを行う植原亮輔さんをゲスト講師としてお招きしました。植原さんは、多摩美術大学デザイン科(テキスタイルデザイン)卒業後、デザイン会社ドラフトに入社し、社内のプロダクトブランドD-BROSに参加。以後、主にプロダクトやグラフィックデザインに携わり、2006年からシアタープロダクツのアートディレクションとデザイン全般を手がけ、そのユニークなグラフィックツールによって、2009年に亀倉雄策賞、東京TDC賞を受賞。現在はやはりD-BROSメンバーだった渡邉良重さんと二人で独立し、KIGIという事務所を設立、広くデザインの分野で活躍されています。
授業は植原さんの今までされてきた仕事についてのお話から始まりました。商品について伺った中でも特に印象に残ったのは、シャンプーの詰め替え容器をヒントに作られた花瓶です。薄くて軽いその花瓶は、何も入れてない状況ではペタンコに折り畳むこともできて、水を入れると表情が変わる傑作。お土産にも好評だというのも納得です。
その話しぶりから、植原さんは一見静かそうに見えて心の中に熱いものを秘めている方なんだなと思いました。また、普通なら聞くことの出来ないような貴重な制作秘話まで教えていただきました。
ワークショップの課題は、今までに自分が作った洋服を一枚持参して、それを中心としたライフスタイルショップのブランディングを行うというものでした。ショップ名を考え、そのロゴをデザインし、ショップ空間や展示、他に売る商品のイメージまで考えなければなりません。授業時間だけで構想を練って発表に漕ぎ着けるのは無理だろうという先生の配慮もあり、事前にある程度考えてくるように言われていました。この日も、発表前に1時間半ほど作業の時間が与えられ、自分の思い描くブランドについてどのように説明すれば伝わるか、皆それぞれ手や頭を使い模索しました。
私は主に言葉で伝えようと思い、ホワイトボードに自分の考えていたことを書き、そのショップに置きたいと思って持参していたものを見せながらプレゼンを行うことにしました。コンセプトは「日々の暮らしに彩りを」というもので、対象を「モノ作りが好きな人orモノ作りに興味のある人」として、創作のキッカケとなるような本を、美術・芸術寄りのビジュアルメインのもの、文章メインのもの、ビジュアル・文章半々くらいのものなどバランスよく取り扱うショップを提案しました。また、本のほかには、長く使って味わいが出てくるような生活家具や雑貨、服を扱い、喫茶スペースと、お客さん自身が使用できるワークショップスペースを設けたお店にしたいと、自分のやりたいことをいっぱいに詰め込んでみました。
発表者は一人ずつ前に出て、ホワイトボードや自家製パネル、自分のショップに置きたいものなどを用いてプレゼンを始めました。一人あたり5分ほどのプレゼンは緊張感の漂うものでした。プレゼン後は植原さんと西谷さんから詰めの甘い点などをご指摘いただき、さらに深く考えさせられました。
私の場合は、コンセプトや企画の練り方、ショップ名の意味合い等、考え方という点ではほめていただけたのですが、ショップ名が「わ」というひらがな一文字ということもあって、「まず『わ』っていうショップ名は、グラフィック的に見てロゴが作りにくいね。もっとオシャレに! そして自分の好きな歌詞とかでもいいからもっとあちこちから探そうよ」と指摘されました。ブランド=ショップ名はお客さんの入り口になるものだから大事だということを、しっかりと教えていただきました。
普段はなかなかこのようなことを考えることがなかったので、いい思考の訓練になったと思います。また、ショップという形にせよブランドを立ち上げるということは、思考的な面やヴィジュアル的な面、空間的な面など、考えなくてはならないことがたくさんあるということに気づくいい機会になりました。
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