京都精華大学ポピュラーカルチャー学部

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2015・3・3授業紹介

ファッション学科

「動き」を客観的に読む ―― ファッションコース実務研修(4)

 ファッションコースの「制作実務研修4」(担当:西谷真理子)は、大学卒業後に目指すべき仕事について理解し、将来の設計図を描くことを目的とする集中講義科目です。今年は2月4日から10日まで5日間かけて行われ、ファッションやその関連業界で活躍するプロを連日ゲストに招いて授業を受け、ワークショップを行いました。受講生の米田真理子さんによる各回のレポートを掲載します。

その1: 人とモノとをつなぐ場の作り方
     井辻康明さん(ジェイアール京都伊勢丹バイヤー、ヤング担当)
その2: みんなの「素敵」を形にする
     加藤智啓さん(ブランディングディレクター、EDING:POST主宰)
その3: 伝え方一つとってもブランディング
     植原亮輔さん(グラフィックデザイナー、AD、KIGI主宰)
その4: 「動き」を客観的に読む
     青野賢一さん(ビームス創造研究所/ビームスレコード各ディレクター)


 最終日の5日目のゲスト講師は、青野賢一さんでした。青野さんは、大学在学中にビームスでアルバイトを始め、卒業後に社員として入社、現在は2010年に発足した「ビームス創造研究所」という社長直轄の部署で働いています。第一印象は飄々とした人という感じで、いわゆる企業人とは一線を画したものを感じました。
 講義の内容は、ライフスタイルショップであるビームスの歴史、どのようなショップがあるのか、ビームスの活動内容(ハード面、ソフト面ともに)や青野さん自身の経歴、仕事内容についてなど、多岐に渡るものでした。今まで私が知らなかったショップの話や、社員の意見が通りやすい柔軟な発想のビームスの社風に驚くばかりでした。
 青野さんは趣味でDJ活動をしていて、それを知っていた社長の発案によってビームス内に音楽レーベルが発足したこと。また、大学時代の友人の中に編集者になった人がいて、その人とのやり取りがプレスという仕事につながっていったり、他のコラボの仕事へ発展したりしたこと。そんな話を聞いて、フットワークの軽さが自由な発想へつながっていくのかなと感じました。

aono1 次の時間は、まず簡単な現在の消費者の動向についての説明を受け、それをもとにビームス京都(藤井大丸1F)の再編・リニューアル案を考えるという課題に取り組みました。青野さんからは、地域性・客層・立地条件など判断の基準になるものが必要だという指摘を受けました。そして、何となくではなく、なぜそうしたのか、それを必要だと思ったのかという疑問に答えられることが大事で、そのために客観性を持たなければならないということも教えていただきました。
 私の班では、現状のビームスに対して、店舗のスペースが広いわりに中の商品の陳列がゴチャゴチャしているのが気になる、いいものを置いている店はもっと中がすっきりしているという意見がまず上がりました。この意見を軸に、いかにその広いスペースを利用するかという点に的を絞って考えていきました。そして、スペース全体をビームスの打ち出しているラインごとに5つに区切るという案がまとまりました。また、四条という立地条件から、あまりお金を持っていない大学生なども多いということもあり、「高級感のあるものに興味があるけど、今はまだあまりお金を持っていない若者」を対象にすることにしました。
 比較的手に入れやすい価格帯のラインを入り口側に配置し、段々と奥まっていくにつれて高価なラインを配置するという構想にして、入り口側の方では商品多め、試着室も多めに配し、奥まっていく程に商品少なめ、試着室も少なめにすることによってそれぞれの雰囲気の違いを出すということにしました。また、ビームスへの入り口は藤井大丸の入り口に近い側に一つだけ配置し、店に足を運んだお客さまに手前の買いやすいものを見に来てもらいつつも、せっかく来たのだからと奥の高級感のあるコーナーまで行ってもらおうという戦略を立てました。
 それから、以前他の百貨店に行ったときに「憧れのブランドの服は高くてまだ買えないけど、小物なら手に入れることが出来る。だから、今はその小物を買って、いずれはそこの服を買う予定」というお客が多いという話を聞いたことがありました。その話を参考にして、手前のラインにはビームスの出している小物(財布、スマホケース、パスケース、キーケースなど)など比較的買いやすい価格のものを前面に出すことによって、ビームスの顧客になってもらうキッカケにしようということで話はまとまりました。

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 プレゼンは、グループごとに前に出てきてホワイトボードを使ったりしながら行いました。それぞれのグループでまったく違った発想の提案になっていて、発見が多くあり面白かったです。今回もそれぞれのプレゼン後に、青野さんからの質問やコメントがあり、密度の濃い内容にするためにさらに考えることになりました。
 私たちの班については、「フロアをラインごとに区切るという戦略について、わかりやすい名前をつけるなら何になるだろうか」「すでにこのような戦略は行われつつあるが、他に現段階のビームスについて何か気になることはあるだろうか」という質問がありました。最後に余った時間で青野さんへの質疑応答となり、中身の濃かった5日間の集中講義は幕を閉じました。

 この授業に関して、はじめはただ何となく、普段あまり接点のない、社会で実際に活躍している方にお会いして話を聞けるということ自体が面白そうだなと思い受講したのですが、様々な個性を持った方々と5日間、毎日約5時間にわたり関わる中で、受ける刺激も多く、我が身を振り返って考えることが多い充実したものだったと思います。今までは、「まだ学生だから」と甘えていたところが多かったなと思い、これから社会に出て行くにあたって“今”自分に何が出来るのか、「今」何をしたらいいのかを考えるいい機会となりました。このような機会を与えてくださった西谷先生とゲスト講師として来てくださった全ての方々に感謝の気持ちでいっぱいです。中身の濃い5日間をどうもありがとうございました。

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