2016・10・7入試関連
※2019年度入試からの入試内容変更により、現在この「ファッション・デザイン」入試は実施されておりません。しかしながら、この入試はファッションコースの教学方針を具体的に示したでもあるため、引き続き掲載しております。
京都精華大学の公募制推薦入試[学校推薦型]B日程(2016年11月13日実施)および一般入試前期B日程(2017年2月1日実施)において、ファッションコースでは専門実技試験「ファッション・デザイン」を実施します(他の日程では学力試験等でも受験できます)。この試験では、入学後のカリキュラムでファッションを専門的に学ぶために求められる素養や、音楽と向き合うための姿勢を評価します。
この記事では前編に引き続き、「ファッション・デザイン」試験における答案の作り方や、練習の際に意識すべきポイントについて解説します。
試験の答案は、
に分かれています。ここでは解答用紙①について解説します。
手順(1)で行ったように、下書き用紙に書き出して整理し発展させた例を書いていきます。問題設定には正解がありませんし、問題設定や解釈の正しさよりも、普段からファッションについて問題意識を持っているかが重要です。できれば6つ同じ視点で書くのではなく、2つか3つづつぐらいのグループで異なった視点で書いておくと、問題意識の幅が伝わり良いでしょう。
下記では、手順(1)で示した視点の例ごとに学生の解答例を紹介しています。もちろん、ここにない独自の視点での解答でも構いません。説明のために、硬い内容や細かいものも多く並んでいますが、もっと見た目の華やかさなどに言及したものでも構いません。
前編の手順(1)で示した分類の例に沿って見ていきましょう。
◆問題点の分析
二の腕が太いのでノースリーブを着るのに抵抗を持っている
脇が気になりノースリーブが着られない
⇒解決方法1 裾の丈の長さ、全体のシルエット、色も工夫する
⇒解決方法2 ノースリーブ単体で売るのではなく、気軽に羽織れるカーディガンなどと一緒に販売する
◆問題点の分析
太ももが細く見えるようなパンツはよくあるが、ふくらはぎが太い人が細く見えるようなパンツ
⇒解決方法1 膝から下にスリットを入れてみる
⇒解決方法2 太めのスパッツ+折り返しを深くする
◆問題点の分析
オールインワンを着たままだとトイレに行きづらい
⇒解決方法1 ウエストにファスナーを部分的に入れて分断できるようにする
⇒解決方法2 前あきをバックまでつける
◆問題点の分析
暑い日に白い帽子をかぶると汗をかいた部分が黄ばんでくる
⇒解決方法1 デザインの一部として汗をかきやすい部分は汗がわかりにくい色を使用する
⇒解決方法2 汗をかきやすい部分を二重構造+取り外し可能な物にする
◆問題点の分析
夏に黒色の服を着ていると重たい印象になる。黒色を着ていても涼しげに印象を受けたい
⇒解決方法1 黒色でもすける素材を使用する
⇒解決方法2 白などの明るい色と組み合わせる。全身黒などの場合は肌を見せてコントラストをつける
◆問題点の分析
ワークウェアがださい。(作業服や工事現場などの服)
⇒解決方法1 ボリューム感や丈感、素材を日常着でも取り入れられるものを使用する(カラーバリエーションなども)
⇒解決方法2 運動量を極端に増やし、ある種のかっこいいコスチューム、衣装のようにする
◆問題点の分析
お店で服を買うときどこのブランドの服かぱっと見ただけではわからない(例えばハンガーラックにかけられているときなど)
⇒解決方法1 服の袖にブランドのネーム(タグ)をつける
⇒解決方法2 服の素材を害さないシールを袖に貼る
◆問題点の分析
実店舗で物を買う人が減少している
ネットで物を買う人が増加している
⇒解決方法1 店員は接客などはせずに試着室やお会計など、極力、お客様との関わりをなくす
⇒解決方法2 店舗でもし気に入った物があればその場でネット注文可にする。手荷物にならない
上記のように、服を着たり買ったりするときに気になったことや、また、通学の電車の中でや、街を歩いたりと普段の生活で何気なく気になったことも、書き出し、整理して発展させれば、問題点と解決方法になります。難しいことを考えるのではなく、ステップを踏んで、何気ない気付きをしっかりと発展させてください。
書き出した案のうち、近しいものは手順(1)で示したように整理しまとめることで、解答に深みが出ます。また、6つの解答をすべて同一の視点で書かずに、異なった視点を混ぜて問題意識の幅を伝えることが、良い評価につながるポイントです。単に6つ解答を書くのではなく、6つの解答をうまく使って、しっかりとあなたのファッションに対する問題意識の幅や深さを伝えられるようにしてください。
解答用紙②では、解答用紙①に挙げた例から2つ以上を選んで、図解入りで詳しく説明します。問題点とその解決方法についての説明に付随する絵なので、うまい絵や魅せる絵である必要はありません。説明を補助する分かりやすさを意識して描いてください。下記は、学生が書いた解答例とその講評です。参考にしてください。
◆問題点
リバーシブルブルゾンは一見、一着で2種類の服を楽しめるようではあるが、けっきょくのところ気に入った方のみを着ることになる。
◆期待される効果
一方は、ツイードのような華やかな素材で、一方は、ゴアテックスナイロンのような機能的に優れた物にして、見た目の使い分けではなく、用途で使い分ける。
【講評】 一般に売られているリバーシブルブルゾンは、確かに、色や柄の違い、もしくは生地が違っても似たような生地が使われ、着るシチュエーションやシーンをガラリと変えることはありません。そうした意味では、新しい需要を喚起する商品になるかもしれず、目の付け所は面白くよい答えです。できれば、もう少し踏み込んで、ツィードやナイロン、それぞれを表にして、どのようなシチュエーションやシーンで使い分けるのかまで書けると、さらに高得点になるでしょう。
◆問題点
足が太い(特にふくらはぎ)が細く見えるようなパンツ。
◆期待される効果
全体的にゆっとりとした形になっているので足のラインがでにくい。ひざから下にスリットをいれることでふくらはぎにゆとりができる。Iラインやパンツの真ん中に折り目を入れること縦のラインが強調され細く見える。
【講評】 体形をカバーして、いかに美しく格好良くみせるか? は、ファッションの大事な機能で、そうしたことと向き合う姿勢はとても良いことです。また、1つの技術やデザイン性だけでカバーするのではなく、3つの要素の組み合わせで考えていることも良い答えだと思います。ただ、細く見えるか? という点では弱く、出来れば、問題点を「足が太い体形をカバーするパンツ」、もしくは「足が太い体形を美しく見せるパンツ」に変化させた方がしっくりくると思います。
◆問題点
同じ服でも着る環境や着る人によって印象を変えたい。
◆期待される効果
人の印象を決定づける大きな働きを持つのは顔。その顔まわりの印象を変えることで全体の雰囲気やその服自体のイメージも変わってくる。着る場所や着る人によってなりたいイメージは違う。ラフに着たいときは空きを広く、かしこまった場では空きを狭くする、など。
【講評】 ファッションで重要な「装い」という点は、自身のこうなりたいという主観性だけでなく、周りの人がどう受け取るかという客観性に左右され、そうした客観性は着る場所や環境によって変わってきます。そうした点に注目しており、とても良い答えだと思います。こちらも、解答例1の講評で述べたように、それぞれどのような場所や環境かの説明があると、さらに高得点になるでしょう。
以上のように、この「ファッション・デザイン」試験は、受験時点での専門知識の量を評価するものではありません。それよりも、普段からファッションについて問題意識を持っているか?ということが重要ですし、普段からファッションと向き合う姿勢を評価対象とします。この姿勢があれば、入学後に学ぶ専門的な内容もおのずと自分のものにできるようになります。さらにこの力は、ファッションと長く付き合っていくための基盤にもなるでしょう。受験対策としてはもちろん、ファッションと向き合うための基礎訓練として、ぜひ取り組んでみてください。
→ ファッションコース入試実技試験「ファッション・デザイン」はこう取り組もう(前編)